オスバルド・ベリンジェリ

オスバルド・ベリンジェリが率いるタンゴ楽団のコンサートへ。会場は、横浜みなとみらいホール、大ホール。
オスバルド・ベリンジェリ(指揮、Pf)、ダニエル・ファラスカ(Cb)、オラシオ・ロモ(Bn)、パブロ・アグリ(Vln)のクアルテート。そして、エステバン・リエラ(Vo)、ダビ・レギサモ&バネッサ・ビジャルバ(Dance)。


会場に入ってすぐ、コントラバス弾きの田邊和弘さん、みーっけ。それまでの眠気など一気に覚めてしまった。とても背の高い方なので、私などは彼を見上げてしまうほど。ニコニコしながら、とても快く握手してくださいました。ありがとうございます。そのときは、田邊さんの手の面積の広さと、厚みに感激〜、笑顔に感激〜、なんて頭の中が田邊さんでいっぱいだったのだけれど、思い返すと、彼の隣に佇んでいた青年?少年?って、小松さんのお弟子さんだったのでは(名前が思い出せない)?!と今さら気づく。あらあらあら。

一部

  • エル・チョクロ(アンヘルビジョルド作曲)
  • パリのカナロ(A・スカルピーノ、J・カルダレーラ作曲)   +Dance
  • レメンブランサス(マリオ・メルフィ作曲)   +Vocal
  • タンゴメドレー(さらば草原よ→ガウチョの嘆き→マランボ・エン・ソル→ラ・プニャラーダ→バンドネオンの嘆き)
  • タンゲーラ(マリアーノ・モーレス作曲)   +Dance
  • ティエンポ・イマヒナード(オスバルド・ベリンジェリ作曲)
  • 愛しい土地(フリオ・デ・カロ作曲)
  • アルギエン(?)   +Vocal
  • ウノ(マリアーノ・モーレス作曲)   +Vocal
  • 空のひとかけら(E・スタンポーニ、E・M・フランチーニ作曲)   +Dance
  • ラ・クンパルシータ(E・G・マトス・ロドリゲス作曲)



二部

  • 恋人もなく(アグスティン・バルディ作曲)   ピアノ・ソロ
  • ガージョ・シエゴ(アグスティン・バルディ作曲)
  • ラ・トランペーラ(アニバル・トロイロ作曲)   +Dance
  • パシオナル(ホルヘ・カルダーラ作曲)   +Vocal
  • タコネアンド(ペドロ・マフィア作曲)
  • パタ・アンチャ(?)   +Dance
  • コントラバヘアンド(アニバル・トロイロ、アストル・ピアソラ作曲)
  • トゥ(?)   +Vocal
  • カミニート(ファン・デ・ディオス・フィリベルト作曲)   +Vocal
  • バンドネオンの嘆き(ファン・デ・ディオス・フィリベルト作曲)   +Dance
  • アディオス・ノニーノ(アストル・ピアソラ作曲)


アンコール

ベリンジェリさんのピアノを聴くのは、昨年10月のTANGO SPIRIT以来かな。あぁ、そうそう、これこれ、なんて心でつぶやきながら聴き入ってしまった。今回も、ベリンジェリさん、のりのり。バンバン足でリズムをとるし、ピアノ叩くし、ヴァイオリンのソロのところなんかで、冷やかしの声をかけたり。そして、滑らかに、しなやかに、豪快に弾けるピアノの音の迫力といったら!ソロで演奏した「恋人もなく」なんて、彼の世界に吸い込まれてしまいそうだった。「恋人もなく」って、こんなにも洒落た曲だったけ?なんて不思議に思ったくらい。曲名をプログラムで確認したり、曲のさわりを聴けば、あぁ、あの曲ねえ、なんて知っている曲が演奏されていたのに気づくのだけれど、どの曲もすばらしく繊細に凝ったアレンジがなされていて、いわば曲が再構築されているので(ほんと?)、まるで別の色を放つ音楽になってしまっているのがおもしろいし、彼らのセンスの良さを深く思い知らされてしまう。あんな「ラ・クンパルシータ」だったら、好きなんだけどなあ。ただ、「空のひとかけら」のアレンジは、よりテンポの速いvivoのアレンジのほうが私はずっと好み。ダニエル・ファラスカもすごかった。コントラバスをフィーチャーした「コントラバヘアンド」は、コントラバス好きにはホントたまらない一曲。低音大好き。生でこの曲の演奏を聴いたのは何度目かなあ。過去に聴いた演奏で印象に残っているのは、山崎実さんの演奏。彼の演奏、ものすごかったっけ。。。それから「愛しい土地」、「ラ・クンパルシータ」、「タコネアンド」、「パタ・アンチャ」などでやっていた、コントラバスの側面の部分に手をこすりつけて『キュ〜ッイッ』っていう感じの音を出すテクニックを初めて見た。ん?今まで気づかなかっただけかなあ。「アディオス・ノニーノ」のピアノのソロのところで、それまで楽器に集中していたダニエル・ファラスカがふと空中をみわたした何気ない自然な仕草が印象的だった。オラシオ・ロモのバンドネオンもいい感じだったし(彼の演奏を聴くのは、一昨年のレオポルド・フェデリコ楽団のコンサート以来。たぶん。)。タンゴだと、どうしてもバンドネオンが目立ってしまうような気がするけれど、このクアルテートはバンドネオンをよい意味で特別扱いしていない気がしていいなあ、と思った。並びも、向かって左からピアノ・コントラバスバンドネオン・ヴァイオリンの順で、きっぱり几帳面に横一列だったし。パブロ・アグリのヴァイオリンがまた、目が離せないくらいすばらしかった。しかも喜多さんに負けないくらいの男前っぷりだったし。Vocalのエステバン・リエラもそんなにコテコテしてなくて好感を持った。Danceのお2人も、若くて華があって見ていて楽しめた。「空のひとかけら」のDanceは素敵だった。桃色のシフォンの衣装を身にまっとったバネッサ・ビジャルバが蝶のようにひらりひらりと可憐に舞っていた。あぁ、久しぶりに素晴らしく洗練されたタンゴにまみれて、満足。