EL TANGO VIVO + 北村聡 

コンサートへ。EL TANGO VIVO熊田洋さん・Pf、東谷健司さん・Cb)+北村聡さん・Bnのトリオ。
会場は山手イギリス館*1の1階、執務室にて。
洒落たシャンデリアがあり、その穏やかなオレンジ色の光の効果で、ますますレトロな印象が漂う。



第一部
1、チクラーナ (フリオ・デカロ作曲)
2、パブロ (ホセ・マルティネス作曲)
3、フリアン (エドガルド・ドナート作曲)
4、パジャドーラ「吟遊詩人」 (フリアン・プラサ作曲)
5、ミ・ドロール「私の悲しみ」 (カルロス・マルクッチ作曲)
6、エル・レマテ「端っこ」 (アルベルト・プグリエーセ作曲)
7、エル・アブロヒート「可愛いアザミ」 (ルイス・ベルンステイン作曲)
8、エル・ポルテニートブエノスアイレスっ子」 (アンヘルビジョルド作曲)
9、オルガニート・デ・ラ・タルデ「たそがれのオルガニート」 (カトゥロ・カスティージョ作曲)
10、エル・ウルティモ・オルガニート「最後のオルガニート」 (アチョ・マンシ<実際はアニバル・トロイロ>作曲)
11、ケハス・デ・バンドネオンバンドネオンの嘆き」 (フアン・デ・ディオス・フィリベルト作曲)


第二部
1、ミ・レフーヒオ「私の隠れ家」 (フアン・カルロス・コビアン作曲)・・・北村さんのバンドネオン・ソロで。
2、エル・チョクロ「とうもろこし」 (アンヘルビジョルド作曲)・・・EL TANGO VIVOのドゥオで。
3、バンドネオン・アラバレーロ「場末のバンドネオン」 (フアン・デアンブロッジョ・“バチーチャ”作曲)・・・EL TANGO VIVOのドゥオで。
4、ペダシート・デ・シエロ「空のひとかけら」 (エクトル・スタンポーニ、エンリケ・マリオ・フランチーニ作曲)・・・EL TANGO VIVOのドゥオで。
5、ミロンゲーロ・トリステ「悲しきミロンゲーロ」 (アニバル・トロイロ作曲)
6、コモ・ドス・エクストラーニョス「まるで他人のような二人」 (ペドロ・ラウレンス作曲)
7、メランコリコ「憂鬱な」 (フリアン・プラサ作曲)
8、チケ「気取り屋」 (リカルド・ルイス・ブリグノーロ作曲)
9、ミロンガ・センティメンタル (セバスティアン・ピアナ作曲)
10、ア・ロス・アミーゴス「友に捧ぐ」 (アルマンド・ポンティエル作曲)
11、ダンサリン「踊り子」 (フリアン・プラサ作曲)
12、カナロ・エン・パリス「パリのカナロ」 (アレハンドロ・スカルピーノ、フアン・カルダレーラ作曲)


アンコール・・・ラ・クンパルシータ (ヘラルド・ヘルナン・マトス・ロドリゲス作曲)



あいにくの雨模様だし、きっとそれほど急いで会場に入らなくてもいい席に座れるよね、とのんびり構えていたら甘かった。今回も一番後ろの席になっちゃったよお・・・わたしのバカ。。。客席は50席くらいだったかな。こぢんまりしていて、こういうコンサートって好きだ。私が座った席の位置からは奇跡的に熊田さんと東谷さんはよく見えるのだけれど、座ったそのままの体勢で北村さんの姿を見るのは絶望的。それでも、一番後ろの席だし誰の迷惑にもならないだろう、とモゾモゾとしきりに左右に姿勢を傾けながら北村さんのプレイを満喫(お行儀悪くてスミマセン)。今回、熊田さんは濃いグレーのシャツ。東谷さんは落ち着いたワインレッドのシャツ。vivoのお二人、とても秋らしいシックないでたち。北村さんは白地に細かくシンプルな幾何学模様(秋色)を散らした感じの清潔感溢れるお洒落なシャツ。


第一部で演奏された曲で、初めて聴いたのは、「フリアン」(激しくも優雅な雰囲気だった)・「ミ・ドロール」(ゆるめに編曲しているのだそう。ある意味スリルがつたわってくるようで楽しかった。)・「エル・レマテ」(軽快な雰囲気だった)・「エル・ポルテニート」(熊田さん曰く「港生まれ、つまり浜っ子のチャキチャキ感がよく表現されている、ユーモラスかつ素朴な曲」)。ちなみに、「エル・レマテ」と「エル・アブロヒート」の2曲は北村さんが譜面におこしたものだとか。それから、今回の「パジャドーラ」、パワフルかつ繊細、ノリもよくてよかったなー。


休憩を挟んで第二部。一曲目「ミ・レフーヒオ(私の隠れ家)」はバンドネオン・ソロなのだけれど、第二部に移る数分前から私の席の数メートル後ろで北村さんがさりげなく練習を始めた。え、うそ、かぶりつきで見たい、という欲望を抑えて(←いつになく大人な態度、えらい。)、私も出来るだけさりげなく(でも耳はしっかりダンボなんだけどね)聴き耳を立てる。こんなラフな音を聴けるっていうのは、なんだかとても贅沢だ。後ろの席で本当によかったと感じたひととき。。。「私の隠れ家」、いい曲だし、素敵だった。バンドネオンはソロ演奏のほうが、より好きかもしれないなあ、しかも穏やかで美しい曲なんかだと、あの楽器の繊細で微妙な音が際立って、うっとりしてしまう。つづいての3曲はvivoのドゥオ。ドゥオだとコントラバスがものすごくよく堪能できるので、うれしい。おなじみの曲をうっとりと聴き入る。「ペダシート・デ・シエロ」って、何度聴いてもいい曲だなあ。くー、たまらん。。。「コモ・ドス・エクストラーニョス」もゆるめに編曲しているのだそう。『ゆるめに』っていうのは、具体的に言うと、メロディーをどの楽器が主に担当するかを予め決めておくくらいで、あとはある程度各自自由に演奏する、というものだとか(←あってるかなこの説明。ちょっと不安ナリ。)。熊田さんのMCによれば、本番の気分(演奏中の気分)によって、その決められた担当範囲を突然勝手にかえちゃうこともあるのだとか(熊田さん、いたずらっぽくおっしゃっていた)。あー、だからさっき演奏途中、東谷さんが驚いた表情で熊田さんを見つめていたのね、、、とスッキリ腑に落ちた。こういう遊び心がある演奏だと、見聴きしているこちらも益々楽しくなる。「メランコリコ」は歯切れがよく、迫力いっぱいだった。「ミロンガ・センティメンタル」は流れるように優雅で楽しく、しかもかっこよかった。久しぶりに聴いた「パリのカナロ」もよかったー。


コンサートは素晴らしかったし、コンサート後も楽しかったし、実にうれしい思いをしたのでした。ああ、もったいない。。。「最後の晩餐」じゃないけれど、もしかして「最後のコンサート」になっても、こういうコンサートだったら悔いはないなー、と思えるくらいよかった。いえ、いたって真面目かつ冷静にそう思うのです、私。

*1:1937年に英国総領事館公邸として建築されたとても雰囲気のよい建物。港の見える丘公園内にある。